Q&Aコーナー
Ⅳ、『科学について』
Q2.「この世界のことは、科学がすべて解決してくれるので、信仰などいらないのではないですか?」
A2.確かに科学の進歩には、目ざましいものがあります。十年前にはわからなかったことが、今日ではもうわかっています。不治の病と言われていたものも、今では恐ろしくなくなったものもあります。
しかし、科学には限界があるのです。何でもかんでも、科学の力によって解決できるものではありません。科学万能主義者というのは、実は、科学について、本当にはよくわかっていない人なのです。科学というものは、現象面のことしか扱うことができません。また、現にあるものを観察し、実験することによって、分析し、説明することしかできません。現象面に現れてこないものや、実験観察のできないものについては、科学はまったく何もできないのです。
たとえば、科学は「死」について、「生命活動の停止」と定義したとしましょう。これは、科学が死を現象面においてとらえ、これを観察という方法で説明したわけです。その点に関する限り、この定義に誤りはないはずです。しかし、この科学の定義を聞くことによって、死に対する私たちの問題は、すべて解決したと言えるでしょうか。いいえ、このような説明がなされても、なお死に対する人間の恐怖は、とても取り去られないのです。死の問題に対する恐怖が取り除かれるのは、死についての本当の意味が理解される時なのです。それは、信仰の問題としてのみ理解することのできるもので、私たちの心が十分満足する仕方で、答えられる時においてのみなのです。こうしたことを考えると、人間は、信仰なしには生きられないことがわかります。人間として生きようとすれば、どうしても、人間の問題を、その本来の問題として、つまり信仰という角度から取り上げなければならないのです。